「例えば休みの日って、何してんの?」
「研磨相手にしてるか、研磨に相手してもらってるか」

「…謎かけじゃないんだからさ」
 苦笑する夜久に、黒尾は肩を竦める。

「研磨~」
 コートの外で水分補給している幼馴染を手招くと何、と嫌そうな顔をされた。

「休みの日、何してるかって」
「ゲームしてるか、クロの思いつきに引っ張り出されるかしてる」
 何でそんなことを聞くのかと訝しげな顔をしながらも、答えを促すとさらりと簡潔に答える。

「つまり、気が向く限りに一緒にいるってことなわけね」
 研磨の返答を聞いて、夜久は呆れたようだった。
 それににやにや笑いながら頷いて見せる。
「そうなるかな」
 研磨はため息をつく夜久を見、それから黒尾へと視線を渡した。

「何の話?」
「彼女作らないのかって言うから、そんな暇ねぇよって」
「……あ、そ」

 素直に答えると、くだらない、と研磨は興味を殺がれた顔をして側を離れていった。
「モテるくせに! 贅沢だな!!」
 ぶつくさ文句を垂れる夜久に黒尾は二度肩を竦めた。
(この調子じゃ気付かれてねぇんだな)
 隠しているつもりはないのだが。


 彼女を作る暇など、あるわけがない。
 恋人ならちゃんといるのだから。


 声に出さないままそんなふうに笑って目を細めた。
 内心できっとちょっと焦ったんだろうな、とそっぽを向きつつこちらをちらりと窺う視線を感じながらあえて気遣ないフリでやり過ごす。
 研磨は正面切ってからかわれるのは照れ臭いのだ。
 そうなるのが嫌だから人前でべたべたするのも避ける。


 全くつれない恋人ではあるが、そんなところもまた可愛いんだよな、と。

 黒尾はにやにや笑った。




20140816