いつもいつも煩いぐらいに喋る山口がすいぶん静かで。

 その日の帰り道は二人の足音ばかりが響いていた。

 

 月島が話題を提供することはそう多くはないから山口が黙りこむと途端に会話は少なくなる。

 沈黙が気になるタイプではないが、山口が何か考え込む様子を見せるからどうにも居心地が悪い。

 月島は仕方なく「なに」と小さく、短く沈黙の理由を問いただした。

 はっと顔を上げた山口が、横目を向ける月島の視線に気づいてへにょりと眉を垂れ下げる。

 

「最近…縁下先輩と仲良しだよね」

 

 言葉を選ぶ様子もなかったから、思わずぽろりと零れてきたのだろう。

 はっとしたように口を押さえる仕草が今さらだ。

 一気に疲れがどっと押し寄せてきた。

 

「で だから何 仲良かったらなんなの お前、僕に縁下先輩とどうこうなってほしいわけ

 

 矢継ぎ早に質問をいくつか投げつけて答えを待つように口を閉ざす。

 きっと山口からは「そんなんじゃないよ」とか「そういうつもりで言ったんじゃなくて」とかそんな感じの台詞が出てくるのだろうと思った。

 もはや予定に近い予想だったのだが。



「縁下先輩がどれだけツッキーに対してフラグ立てても回収させないけど 俺が叩き折ればいいんでしょ



「…は フラグ…

「でも、ツッキーは 縁下先輩に対してフラグ立ててたりしないよね

 

 何を言っているのか理解できない。

 眉間に寄った皺を揉むように指先で押さえながら月島は待てと手のひらを山口に向けた。

 だが一度口を開いた山口は、それまでの静けさが嘘のようにまくし立てる。

 

「仮令そうだったとしてもそれも俺が叩き折るつもりでいるけど でも、さすがに凹むから、どうなのかなって悩んじゃって」

「……やまぐち」

「実際のところ、どうなの

「……。お前が僕のことを好き過ぎるってことが、よくわかった」

「え 何そんな当たり前のこと言ってんの

 

 きょとんとした顔をされて、予想が外れたのが悔しいのか腹立たしいのかよくわからないまま月島はため息をつく。

 

「ねえ、ツッキー、どうなの

「どうもしないよ。もういい。うるさいよ、山口」



(ホント、僕はどうしてコレがいいのかわからない)

 

 

20140816