突然開けられた部室の扉から入ってきた引退した先輩が。

「何してんだ?」
「見てわかんないんですか、鎌先さん?」

俺と青根の見つめ合う姿を見て眉をひそめるのへ。

「わかるなら訊かねぇよ!」
「青根、13日が誕生日なんですよ。で、新聞部が写真を欲しいらしくて」

訊かれたことを丁寧に返して。

「でも、探しても笑ってる写真が全然なくて」

ついでに今の俺の位置もちゃんと説明した。

「じゃあ、撮っちゃえって」
「は?」

つもりだったのに。

「だから写真、撮ってるんですけど?」
「イヤ、わかんねぇよ。だいたいその近さでわかれって方が無理だろ」

否定されたうえに文句まで言われてしまえば。

「あぁ、何か撮ってる間に目だけでも青根ってわかるんじゃね?って思ったらこうなってました」

コッチも先輩だからと遠慮した気持ちも折れるというか。

「こうなって・・・ましたじゃねぇよ! どう考えてもよ!近すぎるだろ!」

今だけでも大人しくしようという努力も萎えるというか。

「え? そーですかぁ?」

どうしてくれようか・・・なんて。

「お前なぁ、チューできちまうぞ!」

イラッとした瞬間に、鎌先さんがいいパスをくれるから。

「え? してもいいんですか?」
「・・・は?」

調子に乗って。椅子に座る青根の膝に乗って。

「できますよじゃなくて、したいんで。してもいいならしちゃいますよー。今すぐし・・・」
「わっ、わかったから! っていうかすんじゃねぇー!」

思ったことを素直に口にしてみたら、この世の終わりを見たような顔つきになった鎌先さんが、俺と青根を力で引き剥がそうとするから。

「残念だなぁ。でもこれで先輩公認ってことですよね! やったなぁ、青根!」

ドサクサに紛れて青根の逞しい身体にぎゅうっとしがみついた俺は。

「全然よくはねぇだろ・・・ホントに大丈夫なのかよ、ウチのバレー部は」
「問題ないですよ! なにせ俺と青根には愛のパワーがあるんで!」

心の底から心配そうな声を出した先輩の前で。
力強いキスを交わしてみせた。




20140816